く ち び る


「怖い、よぉ…」

成長するのは、大人になるのは、時間が進むのは。


こんなに怖くて恐ろしいことだっていうのに。


しばらく逡巡するように黙り込んでいた彼が、私に覆いかぶさるように抱きついてくる。


「離れてもいいだなんて、言わないでください。俺は自分であなたの傍にいることを選んでいるんですから」

「だって、私、は」

とてもとても、弱いのに。


「一目見た時思ったんです。僕の欠点を埋めてくれるのはあなたしかいないって」

熱い水滴が頬を伝ったのも一瞬、彼のざらりとした舌がそれを舐めとる。

「あなたの弱さが、脆さが、俺には必要です。俺はそれがどうしようもなく愛しい」


弱くて脆いあなたが好きです。

そう言われた瞬間、強張っていた身体がゆっくりとほどけていく。


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