く ち び る


自らの言動が招いた結果ではなく、ヤツの席の隣だというだけで女子たちに睨まれるのは、私にとってとても不本意なことだ。


自分がしでかした事なら、まぁ許容というか諦めもつく部分があると思うけど。

あまりに理不尽じゃないか。


学校生活は、目立たず、つつがなく過ごしたい。


だからといって、私からヤツに対する言動が、女子の苛立ちに拍車をかけているのはわかってた。


けれど、ヤツに愛想よく振る舞ったら、それはそれでまた火に油を注ぐかの如く事態を悪化させるだろう。


どちらにしろ隣の席になった時点で私の命運は尽きたのだ。


ならばヤツに調子よく合わせるなんてまっぴらごめん。


だから私のことはほっといてくれればいいのに。


ヤツは私のトゲトゲした態度などには懲りもせず、誰彼構わず口付けたのであろう唇で、「ちーづ」と呼ぶ。


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