く ち び る


 一切の言葉を頭から零していく。


 こんな難しい状況になってしまうなら、いっそ“付き合う”なんて、そんな言葉に。



「……俺が聞きたいのは」



 頷かなければ良かった―――



「茜の気持ちなんだけど」



 なんて。


 私の、気持ち。私は今日、今、何を思ったか。



「違う、よ」


「え?」


「先に代わったのは、蓮人の方……」



 驚きを隠さない表情に臆しながらも、口を止めない。



「気づいてないだけだよ。……私、凄く緊張してる」



 境界線がぶれる。


 どこまで伝えていいのか、うまく判別できていない気がする。



「どうして?」



 気づいたら彼も、手を止めて私を真っ直ぐ見ている。


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