く ち び る


 蓮人が、ずっと好きだった蓮人が私の彼氏だっていう、事実だけで。


 私は幸せでいられたんだと思う。



「……好きだからに、決まってるじゃん」



 蓮人もそうだったかというと、そうではなくて。


 そして今。



「蓮、人………?」


 ここは、どこだっけ。


 私は、何をしているんだっけ。



 そんなことは全部忘れて、私は目を閉じてしまった。



「―――ずっと」



 あぁ。落ち着く匂い。



「それが聴きたかった」



 想いの実が、弾けそうだった。


 この唇から、零れ出る。



「……大好き」



 脳内回線はショートカットされて。


 言えない、言えないと思っていた言葉が、自発的に出てきた。


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