く ち び る


「こんにちはー」

ゆっくりと扉を開けて
中を見渡す


あ、碓氷先輩だ


先輩は眼鏡をかけて本を読んでいた


「ん?宮間か?」

「碓氷先輩、今日は起きてるんですね!」


「昨日は早く寝たからなー
っていうか、それどういう意味だよ」


苦笑いを浮かべる先輩に、私は笑って誤魔化し話題を変える



「何読んでたんですか?」


「新しく図書室に入ってた本」



そう言って先輩は表紙を見せてくれた

表紙には『週刊!宇宙の謎』と書かれていた



先輩、相変わらずだな‥

私が入部してから、先輩が宇宙の本以外読んでいるのを私は見たことが無い。



「面白いですか?」


「うーん、まあまあかな。
宮間も読むか?

宇宙エレベーターの話なんだけどさ、俺的には‥」

「先輩ストップ!
私宇宙の話分かんないんで説明しなくていいです」




私が興味があるのは地球から見える星座だけだし、見えればそれでいい。

だから宇宙の話は分からない


一度だけ、先輩と同じ話がしたいと思って勉強したんだけど、私は文系だからどうも理系の話は小難しくて分からなかったんだ



「あ、そういえばさ。」


不意に声をかけられて
少し肩が上がってしまう


「はい?あ、もう本読まないんですか?」


「うん、知ってる内容だったから」



そう言いつつ閉じた本を鞄の中にしまった


私に気を使ってくれたのかな、
なんて都合良く考えてしまう


< 64 / 116 >

この作品をシェア

pagetop