く ち び る


どんどん規則正しい呼吸になっていき、先輩はすっかり夢の中


「結局、いつも寝てるんだから」


少しふてくされながら、先輩を見る

いつ見ても変わらない格好良さ


触ると柔らかそうな黒髪
綺麗な顔
長い指
少し猫背がちな背筋
女の子よりも細いんじゃないかと思う長い足


本当にズルい、
女の子の私よりずっとスタイルいいもん


それに‥

整った眉毛
今は閉じられている奥二重
そこからはえてる長い睫毛
日本人にしては高い鼻
薄い薄紅色の唇


顔だってきっとそこいらの男の子よりはずっと格好いい

勿論、恋のフィルター的なものはあると思うけど‥
それでも普通に格好いいと思う


「キスとか、するのかな‥」

思わず零れてしまった言葉にはっとして、口を押さえる

先輩はあいかわらず寝ていた



良かった、
聞かれてたら私恥ずかしくて死んじゃうよ


でも、本当にキスとかするのかな?
きっとするよね。


規則正しく息を吸ったり吐いたりする唇

起きてるときは宇宙かスズさんの事ばかり話す唇

きっとこの唇でスズさんへの愛を紡いでいるのだろう


そこまで考えて頭を横に振る

考えれば考えるほど気分は滅入っていくだけだ



「本当に何でこんなに好きになったんだろう」

誰にも聞かれないよう、小さく呟いたその言葉は窓から入ってきた風でかき消された


あぁ、先輩と初めて会った日もこんな風に風が吹いてたな


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