く ち び る


黒髪がキラキラと光に反射したその人は優しい笑顔だった


「あ、私!
宮間 秋って言います、1年です」


「あーっと、俺1人だからそんな畏まらなくていいぞ?」


私は戸惑いながらも、小さく頷く


するとその人は優しく笑い

「今、机散らかってるけど良かったら座って」

と言い椅子を引いて何処かに行ってしまった



座ってた方が、いいよね
でももしあの人戻って来なかったらどうしよう‥!


しばらく悶々としていたら不意に後ろから声が聞こえてきた

「あ、椅子は綺麗だけど嫌か?」

「ぇあ?!」


うわー!変な声出ちゃった‥
恥ずかしいすぎるよー!


「ほらほら、座ってココア持ってきたから」

「ありがとうございます」


熱い顔を隠すように少しだけ頭を下げて椅子に座り、前髪をいじる


「ココア嫌いじゃないか?」

「はい」

「甘い方がいいか?」

「苦めで大丈夫です」


なるべく目を見ないように、前に立つ人の鼻からを舌を見て話をする

全体的な表情は分からないものの、よく見える唇でなんとなく分かった



「はい、どうぞ」

「ありがとうございます。
‥いただきます」


春風が吹き抜ける教室
春だからといってもまだ肌寒く、温かいココアはとても美味しく感じた



ほろ苦くて、凄く美味しい‥


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