く ち び る


自己嫌悪に浸りながら、帰る支度をする

不意に肩を叩かれて振り返ると人差し指で頬をさされてしまった


「にゃにひゅるんでひゅか‥」

「何言ってるか全然伝わってこねー!とりあえず起こしてくれてありがとうな」


ゲラゲラ笑いながら感謝されても嬉しくないんですけど、


「もう!早く帰りますよ!」


まだ笑ってる先輩を見て少し拗ねながらもキュンとしてしまう

笑うとえくぼのできる先輩

その笑顔が女の子を虜にしてるなんて微塵も知らないんだろうな‥



「先輩ってズルいですよね」

「何が?」

「何でも無いですよー
そういえば昨日のテレビ‥」



校門までくだらない話をしながら一緒に歩く

本当ならもっと一緒にいたいけど、方向が違うからどうしようもない


せめて家が同じ方向だったら良かったのに



気付けばもうあと数メートルで校門

もっと話したかったな‥


「んじゃあ、気をつけて帰れよ?」

「はい、また明日。
さようなら」

「おう、またな」



軽く手を振ると先輩も手を振り返してくれた

それだけでまた胸がキュンと高鳴る



こうして手を振り返すのも私だけなら良かったのに、

なんて浅ましい考えが黒い感情が私の頭を巡った


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