く ち び る


「それとも、ちづはオレのこと嫌いなの?」


――……は?


「……嫌いなの?」

「いや別に嫌いってわけじゃ」


恐る恐る切り出されて、ハッキリきっぱり言い切れるひとがいるだろうか。


嫌いなわけではないけど、

非常識さがイラつくというか、

我慢ならないというか。


「嫌いじゃないなら、なんであの挨拶じゃ嫌なの?

外国映画とかじゃよくみる光景だと思うけど」


「なんでって……」


絶句するしかなかった。


ダメだ。ダメだ。

根本的に相容れない。


ここは日本だっと大声をあげたい気もしたが、

しれっと異文化交流とか言い出しそうだ。
言葉を知ってるかどうかは別として。



そんなことがあってから私は、

ヤツからの挨拶には、言葉ではなく拳で対抗しようと思ったのだが、

私の拳は、未だヤツの頬へ到達していない。


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