く ち び る


「先輩、」

「みや‥っ!」


先輩のネクタイを引っ張り不器用にその唇に自分の唇をくっつける


はじめて触れた唇は柔らかくて少し冷たくて涙の味がした‥。



「サヨナラ」


溢れ出る涙を止めようとはせずにただひた走る

目的地なんてないけど、ただ走る


教室の方に走れば運良く開いている教室があった


中に飛び込んで座り込む


呼吸が苦しい、

走ったからかな?
止まらない涙かな?


もうどうでもいいや‥



「うわああああああああっ!」


溢れ出る涙

うまくできない呼吸

押し殺すことのできない声


自分から選んだのに
それでも、こんなに辛いんだ

もし振られてたら私、立ち直れないな



先輩にはスズさんがいて
その間に入る隙間なんてないんだ

邪魔しちゃいけいんだ



悔しい、悔しい、悔しい

こんなに好きでも駄目ならもうどうしたらいいって言うのよ


好きなだけじゃどうにもならないんだ‥


< 86 / 116 >

この作品をシェア

pagetop