く ち び る


くまなく吸い付いてそして、時折、慈しむように肌をはうそれに。わたしはた
だ、なすすべもなく。

「きれいだよ」

部屋に響くのは、甘いあえぎと。

「もっと、もっと」

官能的なまでの、くちびるが立てる音。

「もっと、もっと、もっと」

そして彼の、おどろくほど、甘美な声。

「そまって、僕のくちびるに」


あかく、紅く。
ふかい、闇夜の紅葉のように。

嘆美と妖艶に、うもれていく、私は。


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