ショートストーリー
 
前の彼氏と付き合ってた頃、彼の理想に近付きたくて無理をしていた。

服装も仕草も話し方も。

ずっと好きで居てほしかったから。

理想に近付くことが一番だと思っていた。


だけど

“お前と一緒に居ると疲れる”

という言葉と一緒に、私は振られたのだ。



ありのままの私を見てもらえずに捨てられた。

表面だけじゃだめなんだと思った。

そして何よりも、彼のために頑張ってた自分が馬鹿みたいでくやしかった。




「俺はさ、詩織のことを好きな気持ちだけは誰にも負けないよ。

好きな人のために努力するのも大切だけど、俺はそのままの詩織が好きだ。

馬鹿だって、素直じゃなくたって、詩織が一番なんだ。」


「そんなこと言われたら余計に泣けてくる――」


「えっ?あっ、ごめん!
気持ち悪いよな。」




違うよ。

「嬉しいの。」
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