ショートストーリー
こんなことが起こるのは、ベタなドラマくらいだと思ってたのに。
うつむいていたあなたの視線がゆっくりとあがってくる。
このままじゃ、目が合う。
そして、確実に私の方を向いた視線。
だけど、その瞳は私の前で止まることはなかった。
無視されたのか、ただ気づかなかっただけなのか。
それを私が確かめることはできなかったけれど。
唯一わかったのは、私の胸が痛んだということ。
やっぱりそうだよね。
ドラマみたいには上手くいかないよね。
電車の中で人目を気にしながら、それでも涙は止まらなくて。
どうして私だけ苦しいんだろう?
あなたはきっと、素直で可愛くて女の子らしい、私とは正反対な誰かと幸せを築いてるんだろうね。
そうだ。
いつだって私は素直になれなかった。
強がって、あなたに涙を見せることができなかった。
そんな自分が嫌いだった。
いや、今も変わってない。
私は自分が嫌いだ。
傷はもう癒えたはずなのに跡はしっかりと残って。
こんな寒い日にはズキズキと痛みだす。
どうして幸せはみんなに平等じゃないの?