ショートストーリー
あなたと一緒に過ごした部屋を眺めながら、あなたと出会った日のことを思い出していた。
今でもはっきりと覚えてる。
「何ぼーっとしてんの?」
「優羽と出会った日のこと思い出してた。」
「あー。
俺もあの日のことはよく覚えてるよ。
めちゃめちゃ恥ずかしかったもん。」
「でもあたしはすごく嬉しかったよ。
まぬけな優羽が可愛くてさー。」
「可愛いとか言うなよ。
まさかあの絵を見られるなんて思わなかったからなあ。
でも…あの時風が吹いてなかったら、莉紗とこうすることもできなかったんだよな。」
そう笑って言いながら、あなたはあたしの手を優しく握った。
狭い部屋だと思っていたけど、荷物を全て片付けてしまうと、すごく広く感じた。
この部屋の端っこまで、あたし達の思い出が詰まっているんだと思うと、胸の奥が温かくなる気がした。
「この部屋ともお別れか。」
「…そうだな。」