ショートストーリー
 
この部屋にかすかに残るあいつの匂いが、虚しさを増長させる。

この匂いも、あいつとの思い出も、雨が全部洗い流してくれればいいのに。


なんて。

あいつとずっと一緒に居たせいで、メルヘンな思考がうつってしまったのだろうか。


ああ、また虚しくなる。


悲しさより、後悔より、ただそこにあるのは虚無感だった。

あいつが居ないと俺には何の価値もないように思えた。



このままじゃダメなことはわかっている。

前に進まなきゃいけない。





だが、そう思って俺がとった行動は、あいつとの思い出の品をただひたすらゴミ箱に詰めるだけ。


何してるんだ?俺。

潔くも、男らしくもない。

だから振られたのかもな。
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