ショートストーリー
手が届きそう。
そう思ってしまうような月だった。
そして私は無意識に手をのばしていた。
…みたいだ。
「そんなことして届くわけねーだろ。」
隣りの部屋のベランダから聞こえてくる声。
「わからないじゃない。
ここマンションの7階だよ?
結構高いじゃん。」
我ながら意味不明な言い分だ。
「ふーん。そっか。」
あ、あれ?
いつもなら私のこと馬鹿にするはずなのに。
「変なの。」
「何が?」
「だっていつもはあたしのこと馬鹿にするじゃない。」
「馬鹿にして欲しいわけ?」
「いや、そうじゃないけど。」
「意味わかんね。」
私も自分自身が意味わかんない。