ショートストーリー
自分の鈍さを呪いたくなる。
ボールが飛んで来る一瞬の間、あたしは身動きがとれなくて。
気がつけば、横を転がっていくボール。
あたしをかばうように覆い被さっている直人。
「いっ…てぇ…」
え?痛い?
「あ…。」
あたしをかばってボールが当たったんだ。
きっとボールの泥がついたのだろう。
直人の腕は泥だらけになっている。
なのにあのバカは。
「加恋!大丈夫?
ケガはない?
痛いところは?
怖かっただろ?」
って。
あたしの心配ばっかり。
いつも誰よりも見た目を気にしてるくせに、泥がついて汚くなったシャツも、せっかくさっき直したのにまた崩れちゃった髪型も、全部無視してあたしの心配ばっかりしてる。
本当にバカだよ。