ショートストーリー
私が家に到着してからすぐに、玄関のチャイムが鳴った。
玄関からは出迎えに行った姉と男の人の声が聞こえてくる。
その人の声は彼によく似ていて、胸がちくりと痛んだ。
廊下から聞こえてくる話し声がだんだんと近づいてきて、そしてドアが開いた。
先に入ってきたのは姉だ。
「彩音にもきちんと紹介しなきゃね。
私の婚約者の、桐谷颯斗さんです。」
……え?
姉に紹介されて部屋に入ってきた男性。
声も、名前も。
私の思い過ごしだと言い聞かせたかったのに。
目の前に居た男の人は、間違いなく私がよく知っている顔だった。