スキ*キライ【1】








「せ、先輩っ!」

あたしはギュッと先輩の手を握った。

「は、はい」

「あっ、あ、あたし!」

伝えるんだ。

やっと向き合うことができたんだから。

「せ、せせ先輩のことが…!!」

ほら!恥ずかしくない!!
言うの!!頑張れ、自分っ!!

息が詰まりそうだ。

たった一言なのに、
こんなにも勇気がいることなんだね…。

心臓が破裂しそうな感覚で
あたしは声を絞り出した。




「…………キです…」





やっと絞り出した声は震えていた。

カッコ悪い。
なんてみっともない告白なんだろう。

今まであたしに告白してきた人たちだって
もう少しましだったはずだ。

緊張によって喉の奥が詰まって
声がでなくなったり、
手に汗握る感覚、恐怖やら恥ずかしさやら
伝えることの難しさをあたしは初めて知った。


「ひ、日向」

「………」

何を言われるんだろう?

こわいよ。不安だよ。

そんな感情がぐるぐるぐるぐる廻ってく。

でも次の先輩の一言であたしたちの関係が進展するかもしれない。

不安7割、期待3割。

それなのに先輩はサイテーなことを言った。






「ごめん、声小さすぎて聞こえなかった!」



「…………………………ぁ?」

たぶん、あたしの中で
今世紀一番ひどい顔をして睨んだと思う。

「ヒィッ!?」

この人は…

こんな大事なときに…

「どうして!?なんで聞いてないの!?!?」

あたしは苛立って立ち上がった。

「えっ!?だ、だって…」

「だってもくそもない!!!」

「えぇ!?」

ほんとにほんとにほんとにほんとに!!!

「バカッ!!!!!サイッテー!!!!!」





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