スキ*キライ【1】





「うぐぐぐ……」

き、来てしまった。

2年の校舎に…。

だいぶ静かになった放課後。

誰にも目撃されたくなくて
30分も下校時間とずらした。

そして恐る恐る先輩の教室を探す…。

「ってあたしはストーカーじゃないー!!」

そうよ!もっと堂々としたっていいじゃない!
…………先輩にバレなければ。

そう思い直して、少し胸を張って
よし!と歩き始めたその時。

「おい、なにしてんだ?」

ビクゥゥッ!!

聞き覚えのある声が後ろから聞こえた。

「さっ、佐野先輩…!おお驚かさないでくださいっ」

「いや、不審者みたいだったぞ?」

「えっ!」

なんて酷い!!

「(笑)久しぶりだな、こうしてしゃべんの。どうよ、あれから」

「えっ…と、まぁ普通に生きてました」

そういうことが聞きたいんじゃなくってさ、
と言いながら佐野先輩は
近くの自動販売機で
自分の分とあたしの分を買ってくれた。

おぉ〜、生茶だぁ、美味しいんだよーこれ。

「ありがとうございます。えへへ、嬉しい」

あたしの好きなもの、まだ覚えていてくれた。

ふにゃっと笑ったあたしに
佐野先輩は困ったように
ワシャワシャと自分の頭を掻いた。

「俺、まだお前のことスキだから、そんな顔されるとなにかしたくなるぞ」

「あっはい、、すいません」

つい嬉しくて…。

「お前、葉山とどうなった?」

佐野先輩はおそらくこのことが
一番聞きたかったんだろう。

顔を見ればわかる。

あたしもちゃんと答えなきゃ…。

「つ、付き合って“は”ない、です」

この遠回しだけでも佐野先輩は
あたしの心の変化に気づいたはずだ。

あたし、顔熱いし……絶対赤くなってる。

「ふぅん、でもちゃんと気づいたみたいだな」

ほら、わかってくれた。

「お前がまだ、自分の気持ちに無視してたら諦めないでいるつもりだったけど」

「えっ?」

「そっかそっか〜。あんな普通のやつにねぇ」

「ふ、普通…ですかね?」

「どう見たって普通だろ!お前とうとうそれもわかんないくらいスキになったのか?」

「はっ!いゃ、そういうわけではなくてですね!?」

いや、そういうことになっちゃうのかー!?




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