スキ*キライ【1】





「それはそうと、日向さん」

「え、なにキモイ…」

「オレ、こーんなにスキだっていってんのにさぁ、」

ちょっと拗ねたような声で
何か言いたげに
あたしをさらに強く抱きしめた。

くぎゅうぅぅぅ

「く、くるじぃ、!!せんぱい!!」

「知ってる」

「なぁっ?!だったらはなせ〜」

バタバタ暴れるけど一向に離してくれそうにない。

あたしなんかした!?

「日向が悪いんだからな」

「あたしなにもしてない…!」

「オレと佐藤。くっついてもよかったの?」

え、!

腕を離した先輩はあたしの視線に合わせて屈んで言った。

眉を少し寄せて、

「日向、応援するんでしょ?」

なんて…。

まるでなんでそんなこと言うの?とでも
言いたげに目で訴えてきた。

「違う、あれは」

「なに?」

佐藤先輩から聞いたんだ。
先輩、それでちょっと不機嫌なんだ、。

「た、確かにそういうことになったかもしれないですが、、あれは佐藤先輩がその、無理矢理みたいな…。だから、その」

えぇっと、なんて言えば!

黙ったままの先輩。

言い訳なんて言っても仕方ない。

そう感じたあたしは

「せ、んぱい…」

先輩の頬に優しく触れてみた。

自分の気持ちに向き合ったあの日から、
どんどん深くなってく想い。

キライからスキって
漫画だけの話かと思ってた。

先輩のことなんて
絶対にスキにならないって。

なのに今のあたしは
バカみたいに毎日先輩のことばかり考えてる。


…スキ。

……大スキ。


一度は言おうとした言葉だけど、

伝わらなかった。

キライだったからこそ
日に日に簡単には言えなくなってくる。


そんな日常になって
たくさんのことを知ってく毎日。

触れたい、なんて。

そんなことを思うのも初めてで。

あたしはまだ戸惑ってる。

知らないことばかりで怖くなる。

だからまだ伝えない。

まだ伝えれないんだ。

でも、

スキだってまだ言えないけど、さ。


もう譲れない。

誰にも渡したくないの、。

「誰のものにもならないで…」

せがむように呟いた。





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