オレンジ色のかごの中
「北原みな…さん…でしたよね?」
薄暗くなりつつある住宅街の道を、ぽつりぽつりと歩きながら僕たちは話した。
「…ええ。初めは私もわからなくて…」
「わからなくて…。
わかった時、僕への怒りも思い出しました?僕を…殺したいと…?」
彼女から言われるのが怖くて僕はそう口にした。
きっと誰よりも自分が自分を責めたから、誰かに…いや、最も彼女に否定して欲しかった。
「もう…今はそんな気持ち、ありません。いえ、なくなっていたはずなんです」
「なくなっていたはず」
僕はその言葉にドキッとした。
「なんで…なんで野球をやめたんですか?」
僕は彼女の顔を見ることはできなかった。
「あなたは続けなくてはならなかったのに!彼はあなたを好きで、いつもあなたの球を褒めてて!だから何も言えなかった、彼がいなくなったあとも何も…!!」
下を向いて目をそらす僕の前に身体ごと入って彼女は叫んだ。
「やめないでいてくれたら…!いいえ、やめてしまうのなら私の前に現れないでいてくれれば…思い出さないでいられたんだわ!」
めちゃくちゃに僕の胸を叩いている彼女の薬指には、見覚えのある指輪が光っていた。
彼に連れられて行ったブランド店で、彼が一生懸命選んだ指輪。
あの頃の僕らにはとんでもない額だったけど、今の彼女には少し安っぽい。
「ごめん…!ごめんなさい!」
泣き叫ぶ彼女をどうしたらいいのかわからなくて僕は彼女を抱きしめた。
いや、抱きしめたと言うより押さえつけた、と言う方が正しいだろうか。
取り乱した彼女は力強く僕の胸を叩いて、叩いて道路に座りこんだ。
彼女は今にも倒れこんでしまいそうで、僕はつい余計に力を入れて肩を抱いた。
すると僕の腕を振り払い、彼女は自分の身体を僕から引きはがした。
「いや!触らないで!あなたなんて大嫌い!あなたがいなければ…!」
自分の言葉に、彼女は顔を上げ、目を見開き、驚いて両手で口を抑えた。
やがてその綺麗な目から再び大粒の涙が零れた。
目を閉じ、声を殺して彼女は泣いた。
薄暗くなりつつある住宅街の道を、ぽつりぽつりと歩きながら僕たちは話した。
「…ええ。初めは私もわからなくて…」
「わからなくて…。
わかった時、僕への怒りも思い出しました?僕を…殺したいと…?」
彼女から言われるのが怖くて僕はそう口にした。
きっと誰よりも自分が自分を責めたから、誰かに…いや、最も彼女に否定して欲しかった。
「もう…今はそんな気持ち、ありません。いえ、なくなっていたはずなんです」
「なくなっていたはず」
僕はその言葉にドキッとした。
「なんで…なんで野球をやめたんですか?」
僕は彼女の顔を見ることはできなかった。
「あなたは続けなくてはならなかったのに!彼はあなたを好きで、いつもあなたの球を褒めてて!だから何も言えなかった、彼がいなくなったあとも何も…!!」
下を向いて目をそらす僕の前に身体ごと入って彼女は叫んだ。
「やめないでいてくれたら…!いいえ、やめてしまうのなら私の前に現れないでいてくれれば…思い出さないでいられたんだわ!」
めちゃくちゃに僕の胸を叩いている彼女の薬指には、見覚えのある指輪が光っていた。
彼に連れられて行ったブランド店で、彼が一生懸命選んだ指輪。
あの頃の僕らにはとんでもない額だったけど、今の彼女には少し安っぽい。
「ごめん…!ごめんなさい!」
泣き叫ぶ彼女をどうしたらいいのかわからなくて僕は彼女を抱きしめた。
いや、抱きしめたと言うより押さえつけた、と言う方が正しいだろうか。
取り乱した彼女は力強く僕の胸を叩いて、叩いて道路に座りこんだ。
彼女は今にも倒れこんでしまいそうで、僕はつい余計に力を入れて肩を抱いた。
すると僕の腕を振り払い、彼女は自分の身体を僕から引きはがした。
「いや!触らないで!あなたなんて大嫌い!あなたがいなければ…!」
自分の言葉に、彼女は顔を上げ、目を見開き、驚いて両手で口を抑えた。
やがてその綺麗な目から再び大粒の涙が零れた。
目を閉じ、声を殺して彼女は泣いた。