オレンジ色のかごの中
彼女に逢いに行ったことには何の意味があっただろう。


ひとり見ているテレビは、ちょうど僕たちのあの日の再会を映していた。


−はじめまして−


僕たちがもしも本当に初めて会ったならば…こんなふうに挨拶していたんだ。

この時は二人とも気付かなくて、あの辛い過去はそれぞれの胸に。


蘇る過去に、僕を心ごと身体ごと全部で拒絶した彼女。


わかっていたはずだ。


彼女は僕の顔なんて見たくないってこと。


なのになぜ僕はこんなに逢いたい?


僕がもう10年も抱えこんでいる罪を許してもらいたいから?


それとも


気付かなかった再会の一瞬に見た、あの優しい綺麗な声を聞きたいから?



彼女が彼女であることは…紛れもない事実なんだ。




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