オレンジ色のかごの中
その夢の舞台で、僕はピッチャー、キャッチャーは彼。


彼は僕の球をとても気にいってくれていた。


ずっと、ずっとこうして彼と野球ができるはずだったんだ。



あの時、僕の投げたボールは彼のサインとは違う、テングになった僕のストレートだった。


きっちりチャンスを見極めたバッターは力いっぱいバットを振った。


そこから動揺した僕は投げる球投げる球を打たれ続け、あっと言う間に形勢は不利になった。


次にヒットを打たれれば後がない−

その時、彼は僕に駆け寄って言った。


「打たれたとしてもそのあとは俺達の仕事だ。
お前は俺のミットだけを見て、正確にそこに入れろ。一瞬も目を離すな。俺だけを見ていろ。」


彼が構えたのはど真ん中。

絶対に何かある。
僕には確信があった。


構えて投げるまでの間、スローモーションのような景色が記憶にこびりついている。


僕の腕が降りる瞬間、彼はミットをインサイドに動かした。


僕の身体はそれに反応して、左足は数ミリ内側に踏み降ろされた。


バッターは大きく振ろうとしたバットを慌てて自分側に引き寄せたため、完全に球は芯から外れて当たり、ボールは上に打ち上がった。


彼がボールを追いかけた時だった。


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