8月の花嫁

22

撮影が終わったのは 浜辺がサンセットに染まる頃だった
水平線の上に夕陽が大きく浮かんでいる

「なんてきれいなの…」

スタッフも私たちも暫し見惚れた

「ここではね 8月の花嫁が幸せになれると言われているのよ」

現地のスタッフが言った

「へぇ~そうなの?」

「伝説があるの…
大昔 輝く太陽の神と青く美しい海の神がいて
高い空の太陽の神が青く透き通る美しい海の神に恋をしてしまうの
太陽の神は高い空の上 海の神は地の上 住む世界が違うふたり
遠い場所でお互いの存在を意識しあうだけだった 
だけれど想いは募るばかり 太陽の神は切なくて泣いてばかり
美しい海の神はその姿に心が乱れるばかり 
雨が降り海が荒れる日々が続いたの
そんなふたりを見かねた他の神たちが協議して 
一定の時間だけふたりが近く寄り添う事を許すの
太陽の神は溢れる想いの全てを美しい海の神に注ぎ 
美しい海の神はそれを静かに受け入れる 
今がその時なの
あの彼方に見える水平線に太陽と海が触れる瞬間 
それは太陽の神と美しい海の神のKISSの瞬間とも言われている
愛するふたりが誓いを立ててこの瞬間に
同じ様に愛するふたりがKISSを交わすと
二人の愛はどんな形でも永遠に続くと言われているの
特に8月の今の時期が一番きれいに見れる時だから
それが8月の花嫁は幸せになれるというお話につながってる」

「素敵ね….」

遠い彼方の太陽の神と美しい海の神のKISSの瞬間を見て彼女が言った

その彼女の横顔があまりにも美しくて

私は思わず貰ったカメラのシャッターを押していた



< 22 / 28 >

この作品をシェア

pagetop