8月の花嫁

26

少しづつ太陽が海へと近づき始めた頃


何処にも彼女の姿はなく 私たちは仕方なくホテルへと戻って来た


ロビーに入るとホテルマンが

「先ほどこれをお預かりいたしました」
「俺に?」
「はい 若い女性の方でしたよ これはあなたにです?」
「私にも 先輩?」

彼には大きな箱と手紙
私には手紙

箱の中身は白いタキシードが入っていた

私に宛てられた手紙には


【私の最後のわがままを聞いてほしいの
  彼にさよならをするための儀式がしたいの
   ちゃんと終わりにするために お願いねがいを叶えて】

「行きましょ」
「行って 俺に…どうしろと」
「とにかくこれを着て 最後の願を叶えてあげてください」
「着れるわけないだろう」
「先輩がどんな思いでいると?
  最後だと彼女が言っているんです ちゃんと願いを叶えて
                    終わらせてあげてください」

「僕も…先輩に言える立場じゃないですけど彼女の言う通りだと思います
             最後の優しさを彼女にあげてもいいんじゃないですか」

「...わかった」

「僕も行かせて欲しい」

「うん」


私とあの彼と

そして若い彼と彼女が待つ教会に向かった




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