最初から、僕の手中に君はいる
14 うち、来る?
「ありがとう。あんなに的確なコメント言ってもらって、僕の面子が保たれたよ」
「いえっ、そんな……。私は自分の好み言っただけですから……」
吉住の店で出されたランチの感想は、後で畑山に伝えればいい。行きしに畑山はそう言っていたが、私は柏木という責任者にべらべら感想をまくしたててしまったのだった。
「美味しかったからです。単純に。でなかったらコメントも見つからなかったと思います」
「まあそうかもしれないね、値段も安いし。これでまた、うまくいけばいいな」
時刻は午後3時半。このまままっすぐ帰ってどうするのかというところが問題だが。まさか、朝言っていたことを、本人が忘れたとは思えない。
「さって、これからどうしよっか」
予想通り、畑山が切り出す。
「夜は俺がご飯作ろうか?」
「えっ、畑山部長が!?」
予想もしない展開に、驚く。
「うん。何がいい?」
えっと、それって自宅でってことですよね?
自宅に行くのは、付き合うって返事した時じゃなかったっけ?
そう思ったが、さすがに聞きづらい。
「えっと、別に……」
「何でもいい? じゃあ、海鮮しゃぶしゃぶにしようか」
「えっ、作れるんですか!?」
聞きなれないメニューに驚きながらも、作る方向になっているのが少し怖い。
「もう一人暮らし長いからね」
「あっ、そうなんですか……」
「帰りにスーパー寄って、うち行こうか」
やっぱり、その方向……?
「あっ、その……」
どうしよう、ずけずけ自宅に上がり込んで大丈夫だろうか?
「あれ、付き合いたいって返事くれるわけじゃないんだ?」
やっぱりそういう話でしたよね……。でもそう、聞かれましても、……。
「そういうわけじゃ、ないですけど……」
に少し戸惑ったが、正直に話すことにした。
「なんだか、私、怖くて……。
畑山部長はいつも、優しくて……その……好きとか言ってくれるけど。私、それにうまく応えられるかどうか自分でよく分からなくて」
「永井と迷ってるってこと?」
畑山は考えてあったのか、すぐに質問したが、
「いえっ、永井さんのことは本当にどうも思ってません。
ただ、なんか、一緒にいても、どうしたらいいか分からなくて、いつも戸惑ってばかりだし、なんか、ちょっと、怖い、というか……」
「こんなに優しくしてるんだけどな」
畑山は言いながら、小首を傾げる。
「……すみません……」
「まあ、会社での印象もあるのかもしれないね」
「そうですね、私、最初は誤差のミスを私が犯人だと疑われてると思ってましたから」
「あぁ、あれね……」
畑山は何か考えているようなので黙っていると、やはりしばらくして話始めた。
「あれはね……入力ミスしてるの、時々見てたから」
「えっ、私、ミスしてました!?」
「時々ね。まあ、僕はそれくらい彩のことよく見てるから」
今、何気に呼び捨てにしましたよね。
「えっと……そうかもしれませんね」
何の話だったか一瞬忘れたが、適当に相槌を打つ。
「まあでも、それなら尚更もっと一緒にいないと分からないしね。部長だと思って、無意識に気をつかってるんだろうし」
無意識じゃなくて、意識的に気を遣ってますけど!
「でも僕は、僕の手作り料理も食べてほしいし、どんな家に住んでいるのかも知ってほしいし、それに対してどう思うのかも知りたいしね」
そう言われて、悪い気はしない。
どうしよう、家、行ってみようか……。
「…………」
黙っていると、それを見透かしたように、畑山が聞いた。
「来る? うち」
「いえっ、そんな……。私は自分の好み言っただけですから……」
吉住の店で出されたランチの感想は、後で畑山に伝えればいい。行きしに畑山はそう言っていたが、私は柏木という責任者にべらべら感想をまくしたててしまったのだった。
「美味しかったからです。単純に。でなかったらコメントも見つからなかったと思います」
「まあそうかもしれないね、値段も安いし。これでまた、うまくいけばいいな」
時刻は午後3時半。このまままっすぐ帰ってどうするのかというところが問題だが。まさか、朝言っていたことを、本人が忘れたとは思えない。
「さって、これからどうしよっか」
予想通り、畑山が切り出す。
「夜は俺がご飯作ろうか?」
「えっ、畑山部長が!?」
予想もしない展開に、驚く。
「うん。何がいい?」
えっと、それって自宅でってことですよね?
自宅に行くのは、付き合うって返事した時じゃなかったっけ?
そう思ったが、さすがに聞きづらい。
「えっと、別に……」
「何でもいい? じゃあ、海鮮しゃぶしゃぶにしようか」
「えっ、作れるんですか!?」
聞きなれないメニューに驚きながらも、作る方向になっているのが少し怖い。
「もう一人暮らし長いからね」
「あっ、そうなんですか……」
「帰りにスーパー寄って、うち行こうか」
やっぱり、その方向……?
「あっ、その……」
どうしよう、ずけずけ自宅に上がり込んで大丈夫だろうか?
「あれ、付き合いたいって返事くれるわけじゃないんだ?」
やっぱりそういう話でしたよね……。でもそう、聞かれましても、……。
「そういうわけじゃ、ないですけど……」
に少し戸惑ったが、正直に話すことにした。
「なんだか、私、怖くて……。
畑山部長はいつも、優しくて……その……好きとか言ってくれるけど。私、それにうまく応えられるかどうか自分でよく分からなくて」
「永井と迷ってるってこと?」
畑山は考えてあったのか、すぐに質問したが、
「いえっ、永井さんのことは本当にどうも思ってません。
ただ、なんか、一緒にいても、どうしたらいいか分からなくて、いつも戸惑ってばかりだし、なんか、ちょっと、怖い、というか……」
「こんなに優しくしてるんだけどな」
畑山は言いながら、小首を傾げる。
「……すみません……」
「まあ、会社での印象もあるのかもしれないね」
「そうですね、私、最初は誤差のミスを私が犯人だと疑われてると思ってましたから」
「あぁ、あれね……」
畑山は何か考えているようなので黙っていると、やはりしばらくして話始めた。
「あれはね……入力ミスしてるの、時々見てたから」
「えっ、私、ミスしてました!?」
「時々ね。まあ、僕はそれくらい彩のことよく見てるから」
今、何気に呼び捨てにしましたよね。
「えっと……そうかもしれませんね」
何の話だったか一瞬忘れたが、適当に相槌を打つ。
「まあでも、それなら尚更もっと一緒にいないと分からないしね。部長だと思って、無意識に気をつかってるんだろうし」
無意識じゃなくて、意識的に気を遣ってますけど!
「でも僕は、僕の手作り料理も食べてほしいし、どんな家に住んでいるのかも知ってほしいし、それに対してどう思うのかも知りたいしね」
そう言われて、悪い気はしない。
どうしよう、家、行ってみようか……。
「…………」
黙っていると、それを見透かしたように、畑山が聞いた。
「来る? うち」