晴明の悪点
「なにさ、そっけない男だねえ、外道の貴公子ってのは」
「悪いが、俺は女に興味はないぞ」
十二天将、朱雀。
江戸や平安の都など、大きな都に結界を張る際、東西南北に置かれる四神の一つにも入る、一種の守護神である。
一説によれば、唐の国より伝わる鳳凰という神獣に似ているだとか。
先ほど彼が探しているといった、青龍とかいうのも、同じく十二天将の一人であり、四神でもある。
それは、立派な紺碧の龍であるという。
一方、天一は艶めかしき容貌の朱雀がどうも苦手なようで、
まともに身体に目をやらず、たしなめるような口調で言った。
「朱雀よ、青龍は私が探すといったはずぞ。せめて、出てくるならもうちと着込んで来い」
「あら坊や、あんたに指図される筋合いはないよ。それに」
「それに?」
「青龍が見つかったよ」
彼らの会話は人間らしい。
天冥はさらりと、「よかったな、見つかって」と心にもないことを吐いた。
「いい女に酒をもらって、上機嫌で帰ってきたよ」
朱雀は、その「いい女」の美しさの度合いに嫉妬しているのか悔しがっているのか、
あまり良い言い方はしなかった。
いい女がこんな夜をほっつき歩いているものなのか、と天冥は疑問に思うのだった。