晴明の悪点
「・・・ふむ、天将も見れば人と変わらぬ風情だの」
「そなたもな」
人外なるものの天一にそう返され、人間のはずの天冥は苦笑にも冷笑にも似た笑みを浮かべた。
「俺のどこが、人間に見える」
「一人ぼっちで、別に用もないところで思いつめる」
「俺はそれを、しょっちゅうやってるわけではないぞ」
「そんな様子が、人間らしかったぞ」
「そうかよ」
「人はいつも、どうにもならないことに私情をはさんで考え込む。
天冥よ、そなたは何を思いつめていたのだ」
「別に」
私情を挟む。
その言葉に天冥は真に珍しく、動揺を隠しきれなかった。
だから、別に、という隠し事をする少年のような返答しかできなかった。
言葉以上に、彼の表情はこういうことには嘘をつかない。
この暗闇の中でも、人よりちと視力が強い天将にはその天冥の面持が見て取れた。
「・・・恋情かよ」
びくり、と天冥の肩が大きく跳ねた。
おやおやこれは図星だな、とばかりに天一はわずかに勝ち誇ったような含み笑いを浮かべた。
「色か、恋なのだろう」
「たれがそうだと言った」
「動揺しただろう。隠しても我らには見え透いておるぞ」
「別にっ、――別に恋情について悩んでおるのではない」
「ほう」
「それは本当じゃぞ」
半ば、天冥はむきになった。
確かにそれは本当だ。しかし恋情が彼の中にあるからこそ、それが決断の道を阻んでいる。