晴明の悪点
男と女
* * *
今は昔―――。
いいや、そうはいっても、ほんの十五年ほど前のことである。
いづこの邸宅だろうか、上流貴族の屋敷ほどの豪邸ではないが、それなりに広い。
中流貴族かそこらの邸宅、と思われる。
小袖のおなごが二人いる。
齢は二人とも七つばかり。
一人は背が高く、しかし髪の毛が荒れ放題だ。
もう一人は背が低く、綺麗に梳かれた髪を元結いにしている。
姉妹、か。
おそらく背が高いほうが姉で、背が低いほうが妹だろう。
背格好からして彼女らは相対的だが、一つだけ共通点がある。
二人とも瞳が大きく、猫の如き眼である。
蹴鞠をしていて転んでしまったのか、はたまた夕日に京と共に沈みつつある屋敷の隅に現れた
妖かしを怖がってなのか、背の低いほうの少女は、両手で顔を覆ってしくしくとすすり泣いていた。
背の高い姉と思しき少女が、その妹らしき少女の肩に手を置き、何度も撫ぜて慰めてやっている。
「大丈夫よ・・・」
困ったように、背高の少女は眉を下げた。
「私が、守ってあげますからね。だから泣かないで」
背高は甘えるように、今まで他の姫と同様に守られてきた、背の低い少女の身を抱きしめた。
「あなたが泣かないように、するからね―――」
* * *