晴明の悪点
本当だった。
力量のことなどたかが知れている。――しかし、冴子の時も、
おろおろするばかりで何もしなかったのは、この己である。
だからこそ、もう斯様なことで自分一人が守られるのは嫌だ、と、遠子はそういう思いで言った。
悪く言ってしまえば非力な自分を認めたくないからということにもなってしまうが、
遠子が自分の都合をはさんでいるわけではないことは、明々白々だった。
「では、そのかわりに、遠子様は無理をしないでくださいませ」
と、言ったのはもちろんのこと清明ではなく、蓬丸だった。
「いいの?」
「遠子様のお気遣いをないがしろにするのも失礼でございますし、
けれど無理をさせるのも如何わしいので、本当に、
髪の先ほどの協力でよいのでございます」
「ちょ、ちょっと待たれよ」
これ以上好き勝手させておいたら、今度こそ本当に無礼極まりない。
さすがの清明も口を挟んだ。
「蓬丸、姫様はただでさえこういったものに耐性がないのだ、そんな人にわざわざ・・・」
「清明、私のことを『姫』と呼ばないと約束したじゃない」
あたかも畳み掛けるように遠子は言った。
清明はどうやらもう、何か口をはさむことすら許されぬらしい。