晴明の悪点
ふと、蓬丸は空を見た。
夕暮れが近くなる空に、うっすらと小望月が浮かんでいる。
「清明様!」
蓬丸は屋根から顔を出し、空を指差した。
む?と蓬丸の指差す方向を見上げてみるが、残念ながら築地が建っているために、
清明のいる位置からでは小望月を見ることができない。
「なにがあるのだ、蓬丸?」
「小望月でございます」
「小望月!」
清明が歓喜の声を上げて立ち上がり、狭い庭に出て空を見上げた。
真珠にも劣らぬ白さを帯びた月は美しい。
夜に見るのとは、また違った趣がある。
清明は、小望月を一番に好んでいる。
しかし、望月が美しいというならうなづけるが、小望月が好きというのはなかなか変わっている。
「日が沈めば、またこの都はたちまち妖かしの都となるのですねぇ・・・」
蓬丸が月を見上げながら言った。
「そうだな」
「清明様、外に出てはなりませんよ」
「う」
まさにこの瞬間、清明がとろうとしていた行動を読んだ蓬丸に図星を突かれ、
思わず呻き声を上げる。