晴明の悪点


 * * *


「おや、たれかと思えば、清明の坊ちゃんではないかよ」


 直垂(ひたたれ)を身にまとった二足歩行の青蛙が清明を見やり、

上記の通りに言ったつもりで、げろりっ、と鳴く。


「そんなところで空を見て、いったい何をしておるのだえ?」


 青蛙はそう言っているつもりだが、残念ながら言われた清明には、「げろっ、ごろろろっ」と鳴いているようにしか聞こえない。


「早う帰らねば鬼が出るぞよ。

お前のような美しいものの柔らかい肉なぞ、一口じゃぞ。

ほらこうやって、あーんぐ・・・」


 そこで蓬丸が飛び出し、赤子ほどの大きさの、人を食う真似事でもするように口を開ける青蛙の顎を、
げしっ、と蹴り上げた。

「ぐえっ」

と蛙特有の声を上げ、青蛙は後ろの転がる。

いてて、とばかりに青蛙は顎を抑えた。

 
 どうやらこの青蛙の言葉は、式神の蓬丸には理解できたようだ。


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