晴明の悪点
「お前、いま清明様になにをした!?」
「こんな逢魔ヶ刻に外を出歩いておるからじゃろうが。
ちょっと説教代わりにと、まぁちいっとその華奢な腕を口に含むぐらい・・・」
「があっ」
蓬丸が吠え立て、しゃがみ込んで牙をむく。
その姿は犬の威嚇を絵に描いたようにも見える。
「これ、蓬丸」
さすがにこの騒ぎに気付いた清明が、そう短気になるなと蓬丸をたしなめた。
「そうは言ってもこの蛙、清明様を色々な意味で襲おうとしたのですよ!
色欲にも食欲にも飢えた蛙!」
「蛙であれば色欲を抱いては駄目かの。
都の貴公子らもしょちゅう事に至っておるくせに」
青蛙が冷静に反論する。きいい、と蓬丸が歯を軋ませる。
青蛙は幼いじゃじゃ馬の脅しに乗ってやるように、よいしょと腰を上げて後ろ足で歩き出した。
「ひえ、怖い怖い。まったく、ぬしとぬしの主、どちらが女なのかようわからぬわ」
遠回しに、「ぬしはそれでも女子か」と毒を吐き、頭らしきところを抱えて鬼門の方向に向かっていった。