晴明の悪点
「・・・蓬丸、色欲も何も、私は男ではないか」
「清明様は男には見えないのです。綺麗だから」
男の清明から言わせて見れば、なんとも失礼な青蛙と式神である。
間違っても、あの青蛙が男色を好んでいるというわけでも無さそうだが、
あっても無くても良くないことのように、蓬丸は牙を剥き出していた。
「だからあれほど、夜の都を徘徊してまで月を見るのはよせと言いましたのに、
なにせあのような輩がはいるし、いつ襲い掛かられるか分かったものではない」
「あのような妖かしは、人には襲い掛からぬだろう」
「妖かしだけではなく、人間にも目星をつけているのです。
とても危険――」
蓬丸が言う前に清明は、「はて――」と首を傾げてみせた。
「人は、人を食わぬだろう」
「く」
もういいわ、と言わんばかりに額に指先を当て、
「・・・そうでございますね」
と言った。
日に日に女らしくなり、日に日にこの都で顔を知られてゆく清明が、蓬丸には気懸かりでならぬ。