晴明の悪点


「・・・蓬丸、色欲も何も、私は男ではないか」

「清明様は男には見えないのです。綺麗だから」

 
 男の清明から言わせて見れば、なんとも失礼な青蛙と式神である。

間違っても、あの青蛙が男色を好んでいるというわけでも無さそうだが、

あっても無くても良くないことのように、蓬丸は牙を剥き出していた。


「だからあれほど、夜の都を徘徊してまで月を見るのはよせと言いましたのに、

なにせあのような輩がはいるし、いつ襲い掛かられるか分かったものではない」

「あのような妖かしは、人には襲い掛からぬだろう」

「妖かしだけではなく、人間にも目星をつけているのです。

とても危険――」

 
 蓬丸が言う前に清明は、「はて――」と首を傾げてみせた。

「人は、人を食わぬだろう」

「く」


 もういいわ、と言わんばかりに額に指先を当て、


「・・・そうでございますね」


 と言った。

 日に日に女らしくなり、日に日にこの都で顔を知られてゆく清明が、蓬丸には気懸かりでならぬ。



< 23 / 121 >

この作品をシェア

pagetop