晴明の悪点
「さ、機嫌を直して。月は綺麗だぞ」
「私にとっては清明様のほうが綺麗でございます」
「そんな・・・」
一見お世辞のようでもあるが、本音だ。
しかし残念ながら、男の清明にとってその顔に大した価値はない。
清明は失礼だなとも言えずに眉を垂らす。
「――外見的な綺麗ではなくだ。・・・あの、神秘的さとか、妖光ともつかぬ純真な光が、美しいのではないか」
「そうかなあ」
蓬丸にはいまいち理解しかねぬが、おそらくと考えてこれだけはわかる。
純真な光とはおそらく、人間の心と重ね合わせて言っているのだろう。
うわべだけの美しさならば誰でも作り出すことができるが、見えぬ美しさを作ることは難しい。
人間も、外見でなくとも内側が綺麗であってくれればいいのに、という憧れが、月に対する思いに含まれている。
なるほど、清明様らしい憧れだ。
蓬丸はひそかに思っていたりする。