晴明の悪点
「清明様も思っていらっしゃるのでしょう。
人にも、あのような月の如き美しいお心を持つものが、必ずいると」
「世の中に人は溢れるほどいる。
一人くらいはいるさ。そういう人が」
確かに世界規模で人間の人数を考えたら、一人くらい入るだろう。
これで一人ともいないのならば、この世は世界大戦時代に負け劣らぬほどの穢土である。
ふと、清明は真剣な面持ちで振り返り、木辻大路を見据えた。
耳を澄ましてみれば、蟲たちの声もしんと止んでしまっている。
一寸先も見えぬ暗黒を、清明は直視した。
鋭くなった視線が子の方角を射抜く。
その方角の先で、ぼんやりとした妖光が接近してくる。
「あれは、鬼火でしょうか?」
「わからない」
殺気では無さそうだが、仲良くしましょうというわけでもない。
ただわかること、その妖光を発するものから感じられる呪力は、
そこらを跋扈している無害な妖よりも上回っている。
「妖か・・・。攻めてくるようであれば、私が叩き切りましょうぞ」
「いや、待て」
清明は目を凝らした。