晴明の悪点


 
 すぐ家の目の前にいたのは、見たところ高貴な身分のものと思しき服装の、男であった。年は四、五十歳ばかり。


「誰じゃ、そなた――」

「陰陽師にございます、どう・・・」

 
 言い終える前に、男が清明の両腕をがっちりと掴んだ。


「遠子を助けてくれ!」

「とおこ、さま?」

「物の怪に憑かれたのじゃ」

 
 男が指差す方を見た。

十二単を身にまとった、女である。不気味な女であった。

その身は地面から二尺ほど浮き上がり、ぼんやりと妖光を放っている。

 ここから歩いていては、彼女に追いつけない。


「待っていてくだされ。・・・蓬丸!」

「はいっ」

「そこの御方たちを見ていてくれ、私が行く」

「はい、御武運を!」


 別に戦うつもりは無いが、と言う前に清明は、一寸先も見えぬ闇へと飛び込んでいった。


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