晴明の悪点


「あまり一人で寄り付かぬほうが・・・」

「右京は妖かしが多いのでしょう?父上にも言われるもの」

「はぁ」

 
 先ほどまで物の怪に憑かれていたではないか、と言ってやりたくなる。

強気なのか憑かれていることに対して恐怖を感じていないのかで、とにかく遠子は恐れおののいた様子は見せない。


「ではなぜ、右京に出てくるのですか」

「出てきてはいけないの?」

「いや、姫様のお父上も心配なさっていますし」

「――最近は、右京には一度も来ていない」


 嫌気が差したような顔で遠子が言った。


「やっと一月前になって、婚礼の話がかかってきたの」


 源氏一門の貴公子からである。


「では、めでたい事ではありませんか、そんな嫌な顔をなさらなくても」

「めでたくなんか、ないわ」

「えっ」

「私は独りが好きなの」




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