晴明の悪点
* * *
天冥は高慢にも腕を組み、中務省の築地に背を預け、気取った付け髭を鬱陶しく感じながら曇り空を眺めていた。
ついでに天冥の心は、上の空である。
その横には、不穏な表情の百鬼が控えている。
「天冥さま、本当によかったのですか」
「なにがだ」
「陰陽寮からの誘いをお断りなされてよかったのですか」
「何度も言うておろう。俺は奴らの手には乗らぬ」
陰陽寮の者どもは、官位を餌に自分を見事に手中に収めたつもりだろうが、天冥は喰い付かない。
自分を恐れて、適当な褒美やら官位やらを与えて上手く使おうとしているに違いないのだ。
「・・・どうせ、誘ってくれるのならば」
天冥は、まことに苦々しい顔になった。
「十一年前に、言ってくれればよかったのに」