晴明の悪点
この短時間で気づけぬのは、天冥の阿呆ゆえである。
(外道の貴公子・・・)
泰成は呑気に築地の壁に背を預けている天冥をちらと見やった。
呪力は強かったが、おそるるに足らず。
おそらく頭は普通よりも遥かに劣っているに違いない。
大したことは無い。
これが泰成の本気である。
外道の貴公子と恐れられる天冥が、もっと言えば人殺しに墜ちたただの民間陰陽師が、
陰陽寮に受け入れられて自分を出し抜くなど生意気この上ない。
いいや、陰陽寮にその力を、その力だけを認められた地点で気に食わぬ。
呪力が勝らずとも、頭脳でも覚えているほう術の数も、自分の方が勝るだろう。
己より弱い者が、己の上に立つなど認めぬ。
どうせ、あの男が消え去っても大して都に支障など無いだろう。
(いずれ、殺してやろうぞ)
天冥は、気付かなかった。