晴明の悪点


 周囲の者を巻き込みかねぬ。

清明はほぼいつも通りに天冥の宣戦布告をかわした。

 
「またいつものか清明、悪いが今度ばかりは俺は言う事をきか・・・」


 そこで天冥の額を蓬丸が人の姿をとって蹴倒した。

どげし、という草履が額を殴打する音が大きく響く。

突如の攻撃に後ろによろめいた天冥を、とっさに百鬼が支える。

「女童、貴様!」

 百鬼が怒号にも似た声で唸る。

「べーっ」

 昨日の仕返しだとばかりに大いに舌を出し、蓬丸は清明の前に立つ。

「清明様に手を出したくば、まずは私を倒してからにせよ」

「貴様ならこの我が蹴倒してくれる」

 清明と天冥の決戦どころか、もはや式神対戦になってしまう。

これはよくある、彼らのいつものパターンである。

「やめぬか、蓬丸」

 無論、留めに入るのは平和主義者の清明だ。

「・・・またこれか」

 そろそろお預けにされた天冥も堪忍袋の限界に達していた。

目の前に欲しいものがあるのに手に入れられない。

こういうことを蛇の生殺しという。

目の前に清明がいるのに、戦ってくれない。

「ぬおっ!」

「ぬおっ!」

 睨み合っていた式神が同時に声を上げた。

天冥が、誰もが震え上がるのではないかという、邪悪な呪力を放ったからである。

 



 



 
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