晴明の悪点
朱雀大路は広い。
横にも縦にも距離があり、たくさんの、貴族から庶民まで広い範囲の人々が行き交う。
道祖大路を突っ切り、木辻大路に入る。
木辻大路を南下すれば清明は家につく。
歩む足が疲労のせいか一段と早くなる。
暗くなりゆく、それこそ暗黒に染まりつつある九条大路の方向を見つめていると、昨晩の事をふと想起する。
陰陽師の第六感と言うのは不思議なまでの確実性を持っているらしい。
家に着いた所で、更に疲労感が心の隅で増加した。
どこぞの藤原家からの、文が届いていた。
内容は、中御門大路沿いにある件の屋敷に来い。
それだけという冷たい文であった。
肌で感じる冷たさではなく、簡素すぎる、他の内容など無い閑散とした意味で、だ。
中御門の、しかも藤原一門の方がなぜこのような落ちこぼれの陰陽師を呼ぶだろうか。
清明にはそこか不思議で仕方ない。
「・・・頑張って帰ってきた陰陽寮の役人に、休みは無用でございますか」
苛立った声で蓬丸が言うた。
たしかに彼女の言うとおりである。
一生懸命、朝早くから働いて退出してきた役人を早速呼び出すとは酷使にもほどがある。
酷使もかねて、蓬丸からすれば面倒だ。