晴明の悪点
「中御門はそう遠くないか・・・」
「ええっ?いくのですか?」
蓬丸は不服そうに言った。
「確かに疲れているのは事実だけれど、陰陽師に頼むという事はそれなりの事があったのだろう」
「貴族なんて、隠形(おんぎょう)した妖かしがちょいと突いただけでも、悲鳴を上げて逃げ去るような臆病者でございます。
どうせそのようなことなのでしょう」
「――そうかも知れぬが、何かあってからでは遅いのだ。ゆこう」
「ちぇー」
面倒臭いから行きたくない、というより、貴族のためにやるというのが気に入らないと見える。
蓬丸はさらに不服そうな顔になった。
早々と平常服の水干に着替え、烏帽子を奥の部屋にぽいを放り投げるや髪を後ろで束ねる。
再び履くのに面倒な草履を履き、白い水干の袖をなびかせ小走りで木辻大路を北上した。