晴明の悪点
「いいえ、そういうことではないの」
遠子は首を横に振る。
「昨日言っていなかったの。私が右京に来るわけを」
右京に来てしまうのは道楽ではなかったのか。
貴族の考えることはいまいち考えられないと思った時期があったが、なるほど、
彼らの行動にも理由があるらしい。
深刻な顔をしていることから、陰陽師に相談するほど奇怪なる訳があるのだろう。
「どのようなことにございますか」
清明は真摯な瞳を向け、遠子に言った。
「ずっと昔から、私を呼ぶ声が聞こえるの」
「ずっと昔、とは?」
「かれこれ十年以上も前になるわ」