晴明の悪点
清明か住居を構えているのは、右京の木辻(きつじ)大路である。
右京は手入れがされておらずすでに幽居となっており、
人が少ない代わりに物の怪や妖かしの類が跋扈している。
朱雀大路から右に曲がって道祖(さい)大路や他の小路を突き抜け、木辻大路に入る。
築地にひびが入っているところもあるが、幸いにも清明が住んでいる所はぼろになっていない。
ただし、小さいが。
「ふぅ」
「ふぅっ」
清明が安堵の息を漏らしたと同時に、その白い水干の懐から葉が飛び出した。
蓬(よもぎ)の葉である。
「ふぅっ」と少女の声を漏らしたのは、その蓬の葉であった。
「陰陽寮では喋ることも遊ぶこともできないから、
清明様と話せず寂しゅうございました」
蓬の葉が、瞬く間に少女に変化した。
天狗のような服を身にまとい、頭には頭巾(ときん。修験者がかぶっている帽子)をかぶっている。