晴明の悪点
同い年の男であれば思わず目を瞠るような美少女である。
その容姿は清明にも負け劣ってはいない。
茶髪を忍者のように結い上げ、その髪は彼女が動く度に跳ねる。
見様によっては栗鼠(りす)に見えなくもない。
しかし、女として出るべきところが塵ほども出ていないというのが、唯一残念な点だ。
清明の式神、蓬丸(よもぎまる)である。
式神――陰陽道における神霊の一種だという。
あるものは鬼神を式神に下し、あるものは化生の化け物を式神とし、
またあるものは、植物や命のないものに魂を吹き込み、名を与えることによって式神に下す。
蓬丸は、名を与えられて命を吹き込まれた式神に分類される。
いや、どのみち清明の力量では、晴明のように十二天将とか言った鬼神を式神に下すことはできないだろう。
しかし、蓬丸はこれで存外、強いのだ。
ひとたび戦闘に入れば、その芳顔に似合わず身軽な動きと野性的な性質を武器に飛び掛かる。
「まぁ、最近は依頼も頼みごとも無いから、そのぶん長く陰陽寮で働ける」
「そのぶん長く、私は清明様と話せない」
母親にままごと遊びをすっぽかされた幼女のように両頬を膨らまし、蓬丸は背伸びをする。