晴明の悪点
依頼――大内裏に仕える官人陰陽師は、依頼などではほとんど動かない。
そういうことは、主に陰陽寮に属さぬ『民間陰陽師』の仕事である。
――しかし、この民間陰陽師、なかなか便利だが、なかなか危険なものとなる時もある。
呪術を要する依頼なら何でも請け負ってくれるが、その善悪は依頼人によって左右される。
時に人の役に立つが、もし誰ぞを呪詛せよとの依頼があっても、彼らは断らない。
そうせねば、民間陰陽師らも食ってゆけぬからだ。
代表的な例でいえば、藤原伊周(ふじわらのこれちか)が蘆屋(あしや)道満(どうまん)という強力な民間陰陽師に、
かの怨敵、藤原道長を呪詛させようとしたという例だ。
のちにこの呪詛事件は、安倍晴明が解決したといわれている。
話が逸れてしまったが、清明はあくまで官人陰陽師であって、民間陰陽師ではない。
ではなぜ貴族どもからの依頼を受けるか。
単純な話、清明の性格上、お人好しが祟って断れないだけだ。
いまや晴明の悪点は官人陰陽師も兼ね、民間陰陽師のようなこともすると、なにかと利用しやすい存在となっている。