晴明の悪点


「むっ」


 十数歩歩いたところで、ふと、清明は立ち止まって目を凝らした。

道祖大路まで来たあたりである。

 

 土だ。



 道路のような麻色の明るい土ではなく、栗色やら黒色やらが混ざった、山の土。

それが、明らかに色の違う道路にいくつも塊となって転がっているのだ。

土というよりも、泥である。

「やはり、人が土の中から出てきていたりして」

 冗談ではない。

 清明は本当かもしれぬと密かに確信を抱くのだった。

「確かに、まるで土竜か何かが何十匹と出てきて宵の月を拝みに来たようでございます」

 庶民の場合は、死んだ人間を山に捨てるか、土葬するという場合もなくはない。

「オン・バザラ・テイシャ・・・」

 月天印を結びながら清明は真言を唱え、その左手でその泥に触れ、ようとした。

しかし。

 その泥に触れた刹那、静電気に似た衝撃が清明の華奢な手に走った。

思わず清明は手を引っ込める。

 なんだって――。

 土に宿った呪力を探り出そうとしたところ、逆に拒絶されてしまった。

通常、土やら水やらといった自然のものは、術を受けても拒みはしない。

多少の呪力や神気は宿してはいるものの、拒む感情も持たぬ自然のものは術にかかる。

斯様なことは、予想外どころかわずかとも考えてはいなかった。

――土がここまで出てきている地点で普通ではないけれど・・・。


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