晴明の悪点


「あーっ、酒を取られたっ」


 蓬丸は、「もう、許さない」と犬が如くに牙をむき、あの蛇はどこへ消えたと血眼になって

闇夜を探り出した。

 いや、清明が「やる」と言ったのだから、残りの酒が入った竹筒を取られても仕方ないのだが、

持ってきた本人の蓬丸は、首を縦に振ってはいない。

 あの泥棒猫ならぬ泥棒蛇め、と蓬丸は、うおーっ、と蛇めがけて空に吠えたい思いに駆られた。


「土が消えた・・・」


 吠えたてる蓬丸をよそに、清明は土の痕跡があったはずの場所に、そうっと触れたのだった。








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